現在も活躍する真空管


いまでも真空管が大活躍している分野が2つある。1つはあなたがたぶん今見ているパソコンやテレビの CRT ディスプレイ (ブラウン管)。もっともこれも液晶の追い上げを食らっているが。そして電子レンジ ??。電子レンジが発生する強力な2450MHzの電磁波はマグネトロンという真空管から作られる。ちょっとそれは反則と思った人も多いかも知れない。そう、この2つは形が真空管っぽくない。特に電子レンジのはガラスに入っているわけでもなければ、スイッチを入れるとすぐ作動する。まあこれらは真空管といっても特殊な感じ。


かつてポピュラーだった真空管は日本では現在作られていない。今売られている真空管は昔作られたものの在庫 (=デッドストック) か、ロシア、中国などで復刻のような形で作られたものだそうだ。ところでこれらの真空管、売っているということは何かに使われているのだろうか。

今回調べて意外だったのはマイク。皆さんがカラオケで使うこんなマイク

ではなく、コンデンサ型という、高級で高音質で、レコーディングスタジオなんかで使っているこれ

である。このマイクは構造上 (物理を少し習った方へ。名前のとおり、基本的にはコンデンサなのでほとんど絶縁体=高インピーダンスです。このまま長いケーブルに接続すると雑音を拾いやすくなります。)、マイクの内部にアンプが必要になる。それも高インピーダンスといって、アンプの入り口の電気抵抗が非常に高くて、電流をほとんど流さないものが必要なのだ。ふつうそれには FET という、トランジスタの仲間が使われる。これによって、他のマイクと同じように扱えるようにインピーダンスを低くする。しかし、ざっと調べただけで

ソニー C-800G (\700,000!!)
オーディオテクニカ AT4060
・AKG (オーストリア) Solid Tube (\170,000)
・Neumann (ノイマン, ドイツ) U-47, U-67

などが今でも真空管を使っていて、しかも上の3つは1990年代に入ってからの新製品。さっき書いたようにこのアンプ = 真空管はマイクの中に入る。マイクの中に真空管である。さすがにボーカル用には熱くて持てないだろう。それにこんなの持って踊ったら壊れちゃう


閑話休題。これらのマイクはいずれもそのメーカの威信をかけたというくらいの上位機種ばかりである。真空管のアンプの入り口は本質的に高インピーダンスで、ほとんど電流を流さない。それに加えて入力と出力の関係をグラフにすると、多かれ少なかれきちんとは比例せず、わずかに曲線を描くのだが、真空管はこの「直線さ」がトランジスタより良い。だから真空管のアンプは部品点数が少なく、簡単な回路で製作できる。らしい。

このあたりが、トランジスタとその仲間では得られない高音質の秘密らしい。単なるノスタルジーや思い入れだけではないようだ。トランジスタを使ったアンプは回路設計上の工夫で、歪み率や周波数特性といった、簡単に測定できて数値化できる性能は高くなるのだが。

といったわけで、トランジスタに駆逐された真空管であるが、駆逐された理由は真空管の本質的な性能が悪かったからではない。消費電力が大きい、発熱がおおい、大きい、衝撃に弱い。といった使い勝手の面からの引退だったと言える。



その他、エレクトリックギターのアンプにも真空管式のものが、今でも結構な数売られているらしい。

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